「愛しの荒野 Dear Wilderness」

企画展
「愛しの荒野 Dear Wilderness」
飯沢康輔ドローイング
5月12日(金)-6月11日(日)

ある時代のある場所にある民がいました。その時代は煮えたぎるマグマのように蠢いていました。噴き出したマグマはやがて固まり、固まったマグマは人々に打ち砕かれ、また新たなマグマによって大地をドロドロに溶かした。そんなことが繰り返され赤く灼かれた大地は尚も人に厳しかった。わずかに残された肥沃な土地も乾いたごつごつした谷や岩山が人の入り込むのを拒むように覆っていたのです。それなのに、人々は約束された地を必死で守り戦いぬいてへばりつくように生きてきました。巨大な征服者が何度も現れては消え、その度に人々は土地を追われちりじりになり囚われ殺された。しかし地は血を放そうとはしませんでした。どれほど苛烈な契約を背負わされていても、人は己の肉体が滅びきることも厭うことなく、いっそう厳しく険しい土地へと分け進みました。決して見ることのない恋焦がれし人物がそこにいるかのように人は荒野を目指したのです。